【鉄道転職】車掌の仕事を現役鉄道マンが解説!(勤務体系・車掌の仕事はなくなる?)
- 車掌の仕事って?
- どんな働き方をしているの?
車掌のイメージといえば放送をしたり…ほかに何をしているのでしょうか?
- 車掌の仕事内容
- 勤務体系
- 良いところ、大変なところ
- 車掌の将来
この記事を読むことで、車掌の仕事内容の全体がわかります。駅員→車掌→現役運転士のわたしが、鉄道員にしかわからない目線で解説します!
車掌の仕事内容
「新宿〜新宿〜」鼻にかかった車掌の放送をマネしたことはありませんか?しかし、車掌の仕事は放送だけではありません。
車を掌る(つかさどる)と書いて車掌です。車掌のことを列車長(略してレチ)と呼んでいた時代もありました。
列車の運行には車掌の力が大きく影響しています。まずは仕事内容から解説します!
ドアの開閉
鉄道員の目線から言うと、車掌のいちばんの仕事はドアの開閉です。理由は次のとおりです。
- 仕事の中でドア開閉の割合が多い
- 安全と定時運行に大きく影響する
- センスが問われる
ひとつの車両の長さは約20m、片側には4枚のドアがあります。
10両編成であれば車両の長さは200m、ドアは40枚、15両編成であれば300m、60枚ものドアがあります。
このドアを開閉しているのが車掌です。
駆け込み乗車をしたときにドアが開くことがある。自動で開いているわけではなく、危険だと車掌が判断してドアを開けている。(異物を検知して自動で開く車両もある)
秒単位で運行している日本の鉄道を支えているのは、車掌のドア閉めのおかげです!
車内放送
自動放送が増えてきましたが、乗り換え時刻、遅れ、トラブルなどの放送は車掌にしかできません。
近年では、ハロウィンの時期に車内で刃物を振り回したり、新幹線で火をつけた事件がありました。車掌の放送でパニックを落ち着かせることもできるし、その逆もありえます。
一度に数千人のお客さまに情報を伝える車内放送は、車掌の重要な仕事です。
ちなみに、鼻のかかった声には理由があります。
- マイクの音声が高音になり聞きやすくなる
- 変わった声だと耳を傾けてもらえる
- マイクを持つと声が変わってしまう(不思議)
- ただのマニア車掌
車内の巡視、清掃
駅間で車内に入って巡視をしたり、ゴミが落ちていれば掃除もします。折り返し駅ではゴミだけでなく、忘れ物の確認もします。
ただし、次のような問題もあるので清掃業者に委託している会社もあります。
- 折り返し時間が少ない
- ゴミを捨てる場所がない
- 衛生的に拾えない
- 業務の分散
地方の列車や特急列車の車内巡視では、きっぷの清算をすることもあります。
車両の点検
営業運転に備えて車庫で点検をします。放送やドアに問題がないか、座席に汚れはないかなどを点検します。
出区点検、出庫点検などといい、運転士だけが担当する会社や、車両基地の整備担当に委託している会社もあります。
異常時の対応
鉄道の規則目線では、車掌の任務は列車防護です。
脱線や踏切事故が発生したときに、二次災害を防止するため、まわりの電車を停止させること。駅や踏切の非常ボタンも列車防護のひとつ。
電車が運行する中ではたくさんのトラブルがあります。
- 口論
- 痴漢
- 不審物
- 踏切事故
- 急病人
定時運行も重要ですが、危険が発生したときはすぐに電車を止めなくてはいけません。
安全と同じものはあっても、安全より優先するものは絶対にありません。
車掌の任務は列車防護で、ドアの開閉と放送はおまけとみたいなものです。それだけ列車防護は重要です。
しかし、動いている電車を止めるのは勇気がいることです。あなたも鉄道員になったときにこの気持ちがわかるはずです。
車掌の勤務体系
車掌に限らず、駅員や運転士の勤務は泊まりと日勤に分けられます。
まずは、メインの泊まりから解説します。
泊まり
泊まりはその名の通り、出勤した日は職場に泊まり、次の日に退勤という勤務です。徹夜とも呼びます。
分かりやすくするため、駅員の泊まりから紹介します。
駅員の泊まり(例:遅番) | |
---|---|
9:00 | 出勤 |
12:00 | 昼食 |
18:00 | 夕食 |
1:30 | 仮眠 |
7:00 | 勤務開始 |
9:00 | 退勤 |
9:00〜翌9:00までの24時間勤務です。
一方、車掌・運転士は出勤時間がシフトによってバラバラです。
シフトAという勤務を例にします。
乗務員の泊まり(シフトA) | |
---|---|
11:23 | 出勤 |
13:44 | 昼食 |
19:09 | 夕食 |
23:34 | 仮眠 |
5:44 | 勤務開始 |
9:49 | 退勤 |
分単位なのは電車の出発時刻に合わせているからです。
- シフトF 13:08〜翌11:03まで
- シフトG 15:23〜翌12:23まで
電車の運行上、朝夕のラッシュに人員を増やして、それ以外は乗務員を減らすことで効率の良い経営ができます。
駅員と同じように、全員が同じ時間に出勤する会社もあります。
日勤
オフィス社員でいう9時〜17時です。
もちろん、車掌・運転士はシフトによって出勤時間がバラバラです。日勤の例を紹介します。
5:56 出勤
11:34 昼食
15:23 退勤
7:23 出勤
12:34 昼食
18:43 退勤
11:21 出勤
17:23 夕食
21:57 退勤
泊まり勤務は夜間手当、宿泊手当などが会社として大きな経費になります。朝夕ラッシュだけ日勤で補充することで、効率化や働き方の多様化につながっています。
車掌の良いところ
車掌をやっていて良かったことを、わたしや同僚の経験談からお伝えします。
子どもとの触れ合いが最高!
子どもとの触れ合いが最高です!幸せです!
車掌は子どもの憧れです!キラキラした目で見つめられると、こちらも指差確認に気合いが入ります!カッコ悪い仕事はできません。
敬礼したり手を振ると大喜びしてくれるので、こちらも嬉しくてたまらなくなります!
電車、制服、白い手袋…子どもからはすべてが光って見えます。制帽やカバンを持ってもらい写真を撮ったら大興奮です!
どんなに疲れていても、子どもからの視線を無視することはありません。
駅員と乗務員では憧れの差が一気に変わります。乗務員をやっていて本当に良かったな〜と心から思います。
駅間はヒマ
基本的に駅間はやることがないのでヒマです。
ドアの開閉は全集中ですが、それ以外はまったりしています。一瞬でON・OFFを切り替えられることが仕事のコツでもあります。
運転士はずっと運転してて大変だなーなどと思いながら、ボケーっと通り過ぎる景色を見たり、ストレッチをしています。
揺れるので書きづらいですが、手帳に乗務スケジュールを書くこともあります。(乗務員あるある)
放送やドアの開閉が楽しい
放送が聞きやすかった、わかりやすかった、ドアを開けてくれてありがとう、などとうれしい言葉をもらうことがあります。
放送がスラスラとできたり、一発でドアが閉まると気持ち良いものです。わたしは一発閉めにこだわって車掌をやっていました。
ドアを閉めるとき、再開閉をしないで一発で閉めること。ムダが無くリズム感も良いので、運転士にとってもありがたい。こだわりすぎるとドア挟みの原因になる。
経験を重ねると駆け込みの多い場所を把握できたり、危険な気配を察知できるようになります。
一緒に仕事をしているベテラン運転士に「ムダがないね」などと褒められたらニヤニヤしてしまいます!
車掌の大変なところ
どの仕事でも言えることですが、大変なことの方が多いでしょう。ここでは代表的なものを紹介します。
足腰が疲れる
車掌は基本的に立ち仕事です。前後左右に揺れる電車の中で1日中立っていると、慣れている車掌でも疲れます。
運転の荒い運転士だとなおさらです。急加速、急ブレーキ、曲線MAX運転…遅れてもないのにカッ飛ばす運転士と組むと足腰が崩壊します…
着席が許可されている会社もありますが、ウトウトしてしまうのでわたしは立っていました笑
勤務が不規則
乗務員はいろんな出勤時間があるので、生活が不規則になります。
日勤で朝5時に出勤、次の日は泊まりで14時出勤、非番で寝過ぎて夜寝れない…など駅員とは比較にならないほど不規則な生活になります。
乗務員に年齢制限を設けている会社もあるくらいで、体力が持たなくて乗務員をあきらめるひともいます。
ただ、多くの乗務員は、平日昼間の非番を楽しんだり、予定に合わせて同僚とシフトを交換したりと、乗務員のメリットを有効に活用しています。
異常時は大変
当然ですが、乗務員は気軽に電車から離れることはできません。トイレに行くのも一苦労です。
家族に急があっても、交代の乗務員が来るまで家に帰ることはできません。人身事故などの輸送障害だと、交代が来るまで何時間も乗り続けることがあります。
電車内で刃物を振り回したり、放火したりという事件も発生しています。
放送ひとつで落ち着かせることもできるし、パニックにさせることもできてしまうので、車掌の仕事は人命を預かっているともいえます。
わたしも、たくさんのトラブルを経験してきましたが、小さなトラブルでも完璧な対応ができたことはありません。
車掌自身が焦る異常時に、1番安全な選択を瞬時に判断するのはとてもむずかしいことです。
車掌に求められるスキル
車掌の仕事は決められた作業の繰り返しです。作業自体は中学生でもできます。
しかし、出発時間などの制約に追われることで、作業の順番を間違えたり、飛ばしてしまうことがあります。
車掌にはどのようなスキルが求められるのか紹介します。
自己管理
車掌や運転士は出勤時間がシフトによってバラバラです。
分単位の出勤時間に合わせて、前日の行動や睡眠時間、飲酒量を調整しなくてはいけません。
日勤で朝5時に出勤したり、泊まりで15時に出勤することもあります。
出勤遅れ、担当電車の出遅れ、アルコール値オーバーなどで失敗している人をたくさん見てきました。わたしもやったことがあります…
車掌の作業自体は難しくありませんが、ミスの原因の多くは慣れや油断です。
このように車掌や運転士には、担当電車の出発時間を気にしたりと、秒単位の自己管理が求められます。
正直に言える勇気
例えば、担当電車が停止位置を10メートル行き過ぎてしまったとします。運転士は「ごめーん、大丈夫だからドア開けてー」と言っています。
あとから苦情が入ったらあなたも処分を受けることになります。
運転士さん、輸送司令に報告してください。
このように言える勇気はありますか?
自分がミスをした場合も同じです。あなたが報告しないと運転士も巻き込んでしまいます。
バレなきゃOKの時代もありましたが今は違います。ミスをしたことよりミスを隠蔽する方が重罪です。
このように、車掌には正直に言える勇気が求められます。
運転士と車掌の仲が良いために、ミスをかばったり隠蔽してしまうことがある。これを防止するために、運転士と車掌のシフトを別にして、誰と組んでいるかわからなくしている会社もある。(運転区、車掌区)
車掌の仕事はまだなくならない
ATC、ATO、TASKなど自動運転の普及で運転士の負担が減りました。そのため、車掌の業務を運転士が行う、ワンマン運転が増えてきています。
しかし、設備投資に莫大な費用がかかるため、実現できる路線は限られています。
- 地上側、車両側の設備投資が必要
- ムリに導入する必要がない
- 採算が取れない
- 異常時の対応要員として車掌が必要
車掌の仕事がなくなる日が来るかもしれませんが、何十年も先でしょう。それも首都圏の一部だけです。
もし危機感を感じているのであれば、そのときは運転士を目指してください。
車掌の仕事はまだまだなくなりません。
まとめ
この記事では、車掌の仕事を全体的に解説しました。
トラブルが起きたときに、お客さまを安心させるのは車掌の仕事です。神業のようなドア閉めで遅れを回復する車掌もいます。
鉄道会社に就職したのであれば、ぜひ乗務員も目指してください!
車掌を経験した者からすると語りたいことはもっともっとあるので、他の記事で紹介させていただきます。
ありがとうございました!