【鉄道転職】運転士の仕事を「現役の運転士」が熱く解説!(勤務体系・将来)
- 運転士の仕事って?
- どんな働き方をしているの?
運転士は電車の運転をしている…それ以上は知りませんよね。運転士はどんな働き方をしているのでしょうか?
- 運転士の仕事内容
- 勤務体系
- 良いところ、大変なところ
- 運転士の将来
この記事を読むことで、運転士の仕事内容の全体がわかります。駅員→車掌→現役運転士のわたしが、運転士にしかわからない目線で解説します!
運転士の仕事内容
電車を止めること
運転士の1番の仕事は電車を止めることです。
電車を動かすことは小学生でもできます。しかし、所定位置に衝動なく電車を止めたり、異常時に躊躇なく電車を止めることは、プロの運転士でもむずかしいことです。
利用者からすると電車が所定位置に止まって、ドアが開くことは当たり前です。しかし、運転をする側としては、電車を止めるのは当たり前のことではありません。
- 試験でライバルを蹴落とす
- 勉強漬けの研修期間
- なんとか試験に合格
- 地獄の見習い期間
- 過密ダイヤ
- 秒単位の運転
ブレーキ中に数秒でも気を抜けば、停止位置を行き過ぎてしまいます。雨や雪の中、電車を止めるのは本当に大変です。
鉄道員に共通して言えることですが、運転士の1番の仕事は電車を止めることです。
車両の点検
営業運転のために車庫で車両の点検を行います。出区点検や出庫点検ともいいます。
床下の機器、パンタグラフの上昇、ブレーキの試験などを行います。
点検を車両基地の整備員に委託している会社もあります。
異常時の対応
電車を運転しているとたくさんのトラブルが発生します。
- 異音・異物
- 踏切のムリな横断
- 踏切に自動車が侵入
- 人身事故
- 車両故障
車掌は車両の構造を知らないので、運転士に頼るしかありません。運転士が「わかりません」では通用しません。
運転士はあらゆる事象に備えるとともに、車両のプロフェッショナルでいる必要があります。
車両故障を運転士ではなく、車両係員が対応する会社もある。労働災害を防止するためと、業務の合理化が目的である。
運転士の勤務体系
運転士に限らず、駅員や車掌の勤務は泊まりと日勤に分けられます。
まずは、メインの泊まりから解説します。
泊まり
泊まりはその名の通り、出勤した日は職場に泊まり、次の日に退勤という勤務です。徹夜とも呼びます。
分かりやすくするため、駅員の泊まりから紹介します。
駅員の泊まり(例:遅番) | |
---|---|
9:00 | 出勤 |
12:00 | 昼食 |
18:00 | 夕食 |
1:30 | 仮眠 |
7:00 | 勤務開始 |
9:00 | 退勤 |
9:00〜翌9:00までの24時間勤務です。
一方、車掌・運転士は出勤時間がシフトによってバラバラです。
シフトAという勤務を例にします。
乗務員の泊まり(シフトA) | |
---|---|
11:23 | 出勤 |
13:44 | 昼食 |
19:09 | 夕食 |
23:34 | 仮眠 |
5:44 | 勤務開始 |
9:49 | 退勤 |
分単位なのは電車の出発時刻に合わせているからです。
- シフトF 13:08〜翌11:03まで
- シフトG 15:23〜翌12:23まで
電車の運行上、朝夕のラッシュに人員を増やして、それ以外は乗務員を減らすことで効率の良い経営ができます。
駅員と同じように、全員が同じ時間に出勤する会社もあります。
日勤
オフィス社員でいう9時〜17時です。
もちろん、車掌・運転士はシフトによって出勤時間がバラバラです。日勤の例を紹介します。
5:56 出勤
11:34 昼食
15:23 退勤
7:23 出勤
12:34 昼食
18:43 退勤
11:21 出勤
17:23 夕食
21:57 退勤
泊まり勤務は夜間手当、宿泊手当などが会社として大きな経費になります。朝夕ラッシュだけ日勤で補充することで、効率化や働き方の多様化につながっています。
運転士の良いところ
現役運転士のわたしと、同僚の経験談から紹介します!
運転が楽しい!
電車の運転は奥が深過ぎます。同僚や先輩運転士のこだわりを聞くと「うそでしょ…そんなことにこだわってるの!?」と自分の運転が情けなくなります。
追求すればするほど、新しい景色が見えてくるのでゴールはありません。
- 遅れていても揺れる場所は速度を下げる
- 連結器の伸び縮みに合わせてブレーキを払う
- ブレーキを払う時はB1で止めてから
- 起動時の衝動を減らすノッチ投入
- ブレーキの緩解から起動までのタイミングを毎駅一定にする
さらに、車両にはクセがあります。前10両はブレーキが効かない、後ろ5両はバリ効きということもあります。
- ブレーキが効く・効かない
- 最初・最後だけ効く
- 最初・最後だけ効かない
全ての電車で同じブレーキを取ることはありません。車両のクセを読んで思い通りのブレーキが取れたときはたまらない満足感があります!
もちろん、ブレーキがうまくできないときは悔しくてイライラすることもあります。
自分のブレーキに対して一喜一憂しているのが電車の運転士です!
子どもとのふれあいが車掌以上にある
運転士は運転席に座っているだけと思われがちですが、子どもとのふれあいはたくさんあります。
運転士になってわかったのですが、線路沿いにたくさんの子どもがいるのです!
10時頃は幼稚園や保育園のお散歩の時間なので、たくさんの子どもたちが電車に向かって、手を振ったり声を掛けてくれます!
それに応えるように気笛を吹くと「わぁー!」とかわいい歓声があがります!さらに白い手袋で窓から手を振ると、子どもたちはテンション爆上げ大興奮です!
子どもがよくいるスポットを同僚と共有したり、運転士は常に子どもの視線を探しています!
接客がない
駅員はもちろんのこと、車掌は放送をしたり、ホームで案内をしたりと接客があります。それが運転士になると、接客をすることがほとんどなくなります。
電車の乗り心地が接客につながるという考えもできますが、基本的には機械が相手の仕事です。
近年、話の通じないお客さまが増えているので接客は苦手でした。
接客がイヤで乗務員を目指す人もたくさんいます。
運転士の大変なところ
船、飛行機、バス、トラック、重機、電車…何かを運転する仕事は大変です。大変だからこそ魅力があり、憧れるのかもしれません。
電車の運転士の何が大変なのか、代表的なものを紹介します。
神経が疲れる
運転士は常に神経をとがらせています。
- 編成両数
- 停車駅
- メーター
- 支障物
- 時間
駅間はヒマという運転士もいますが、その中でも何かしらに神経を注いでいます。
ブレーキの効きがわるかったり、踏切をムリに渡ったり、ホームで接触しそうになったりと、冷や汗をかくことがよくあります。
細かい運転をする人ほど神経を消耗してしまいます。精神的に病んでしまう人もたくさんいるので、図太い神経をしている方が運転士として長生きします。
勤務が不規則
乗務員はいろんな出勤時間があるので、生活が不規則になります。
日勤で朝5時に出勤、次の日は泊まりで14時出勤、非番で寝過ぎて夜寝れない…など駅員とは比較にならないほど不規則な生活になります。
乗務員に年齢制限を設けている会社もあるくらいで、心身が持たなくて乗務員をあきらめるひともいます。
多くの乗務員は平日昼間の非番を楽しんだり、予定に合わせて同僚とシフトを交換したりと、乗務員のメリットを有効に活用しています。
異常時は大変
乗務員は気軽に電車から離れることはできません。トイレに行くのも一苦労です。
家族に急があっても、交代の乗務員が来るまで家に帰ることはできません。人身事故などの輸送障害だと、交代が来るまで何時間も乗り続けることがあります。
近年では、停止信号へのブレーキが遅れてトラックと衝突したという事故もありました。
少しでも気を抜けば停止位置を行き過ぎたり、ブレーキが遅れて重大事故につながります。
自分で引き起こした事故が発生したとしても、対処できるのは運転士しかいません。
通勤ラッシュ時に運転席から後ろを振り向くと、とんでもない数のお客さまがギュウギュウに押し込まれています。そんなときに運転士としての重圧を感じることがよくありました。
異常時こそ腕の見せ場ですが、大変なのは言うまでもありません。
運転士に求められるスキル
運転士免許を取得するのと、運転士として生き残れるかは別の話です。
運転士に求められるスキルを紹介します。
自己管理
乗務員は出勤時間がシフトによってバラバラです。
分単位の出勤時間に合わせて、前日の行動や睡眠時間、飲酒量を調整しなくてはいけません。日勤で朝5時に出勤したり、泊まりで15時に出勤することもあります。
駅員や車掌のときは寝不足でもどうにかなりましたが、運転士の寝不足は命取りです。
出勤遅れ、担当電車の出遅れ、アルコール値オーバーなどで失敗している人をたくさん見てきました。わたしもやったことがあります…
運転士には、担当電車の出発時間を気にしたりと、徹底した自己管理が求められます。
こだわりすぎないこと
運転に慣れてくるともっとうまく運転したいと考えるようになります。
経験のある運転士は限界を知っていますが、なりたての運転士は怖さを知りません。
仕事への熱意がもっと速く運転したいになると危険です。
ムリに最高速度で運転して前方への注意が疎かになったり、ギャンブルブレーキで停止位置を行き過ぎてしまったりします。
- 安全
- 定時運行
- 乗り心地
運転士はこだわりを持つべきですが、あっさりこだわりを捨てることも必要です。
- 一瞬でこだわりを捨てることがこだわり
- こだわりを持たないことがこだわり
ベテラン運転士はたくさんのミスやトラブルを経験しているからこそ、こだわることの怖さを知っている。かつて自分がそうであったように。
カラダで感じる力
電車は生き物です。
素直な子、ツンデレ、じゃじゃ馬、たくさんの車両がいて、運転理論上は止まるはずなのに、止まらないことがよくあります。
そこには計算に含めていない抵抗や、車両のクセ、錯覚などが影響しています。速度計だけ見て運転していても電車は止まりません。
- なんか危なそう
- なんとなく気になる
- とりあえずブレーキを追加しておこう
運転士はこの直感を大切にしなければいけません。
目で見て、音を聞いて、ニオイをかいで、気配を感じる。運転士として生き残るには、カラダで感じながら運転することが求められます。
運転士の仕事はなくならない
ATC、ATO、TASKなど自動運転の普及で運転士の負担が減りました。そのため、車掌の業務を運転士が行う、ワンマン運転が増えてきています。
踏切のないモノレールなどは無人自動運転ですし、運転士は座ってハンドルを握っているだけという路線が首都圏にあります。
しかし、設備投資に莫大な費用がかかるため、実現できる路線は限られています。
- 地上側、車両側の設備投資が必要
- ムリに導入する必要がない
- 採算が取れない
- 異常時の対応要員が必要
山手線などの超過密ダイヤは、人の感情を取り入れない自動運転でなければ、乗客数をさばけないでしょう。
収益もあるから採算もOKです。日本の技術力向上のためにどんどん発展して欲しいものです。
しかし、それができるのは一部の路線だけです。
自動運転の前に、支障物センサーや運転支援装置の精度を高めて、運転士や車掌の負担を減らす未来が来るでしょう。
順番的には車掌の仕事がなくなる日が来るかもしれませんが、何十年も先でしょう。それも首都圏の一部だけで、運転士の仕事がなくなるのはさらに先です。
まとめ
この記事では、運転士の仕事について全体的に解説しました。
大変なところもありますが、世界に誇る日本の鉄道を支えているのは、ひとりひとりの運転士のおかげです。
運転士はこれからも必要とされる職業です。
あなたも運転士になって、たくさんの子どもたちを笑顔にしてください!
ありがとうございました!